ジンジニアニッキ!

人事→Opsな人のニッキ。真面目なことも、そうじゃないこともごっちゃで書いてます。

【後編】転職活動で気づいた、採用が下手な会社と上手な会社

前回の続きです。
前回のエントリーが予想外にバズっており、小心者の私は非常にビビっております。
皆様のコメントがとても優しいのが嬉しいです。


ところで、ブコメの中に「お見送りの理由ってわかるものなの?」といった反応があったのが目に留まりまして…。
返答としては、「できるエージェントを利用していると、わかる場合も多い」です。
できるエージェントの人は採用企業側からも信頼がされているため、面接後の感想や評価を回収することができます。
自己応募だと企業側の反応やフィードバックを手に入れることはなかなか難しいですので、転職活動においてエージェントを利用する大きなメリットだと思います。


採用が上手だなぁと思った会社に見られる共通項

前回書いたことの反対です。
…と言うと元も子もなくなってしまうので、頑張って書きます。


良い印象を持った会社や面接に共通して言えることは、「素早く」「誠実で」「丁寧な」対応をしている会社なのかなぁと思います。


採用のためには会社や事業の状況、組織やチームのバランス、経営計画やビジョンといった様々な変数を考慮する必要があり、だからこそ「なかなか良い人がいないなぁ」なんてことになるのが一般的かと思います。


上記3つを実現するためには、採用に関わる人それぞれが「会社/事業/プロダクト・サービス/チーム/自分は今どんな状況で、それらを今後どのような状態にしていきたいのか」ということを考えて言語化することが重要です。
それがあって初めて、どういうスキルセットやマインドを持った人にどういう仕事を任せたいのかということが具体化されるのだと思います。
ですので面接や選考という場は、自分たちの状況について日頃からどのくらい考えながら仕事に取り組んでいるのかということが如実に現れてしまう場なのかもしれません。


1. インターネットに公開していない情報も提供してくれる

せっかく時間をとって面接や面談を実施するわけなので、会社サイトやインタビュー記事等に書かれていることだけでなく、その場でしか話せないことや足を運ばないと感じられない情報を手に入れていかないと互いにとって機会損失だと思います。

私の場合は先のエントリーに記載の通り、「課題」について質問することが多かったです。
話の流れや相手に合わせて「課題は何ですか?」と直球に聞くこともあれば「困っていることはどんなことですか?」と聞くこともありましたが、それらの質問に対して真摯に答えようとしてくれる会社は印象がよかったです。

「課題は何か」という質問と合わせて「それらの課題に対してどう解決しようとしているのか/どのように取り組んでいるのか」といったことも合わせて聞くようにしていました。
これは、自身の経験で「大きなビジョンや理想像は掲げているが実態が伴わない」というケースにも遭遇しているためです。
「認識はしているが手が回っていない」と率直に答えてくださる会社もあれば、「難しいからねぇ…」と半ば諦めている会社もありました。
課題解決に対して動いていることが望ましい状況ではあるのですが、手が回っていないという状態もとてもよくわかりますし、だからこそ人を採用したいという話に繋がると思います。
そうした面も含め、会社の状況について包み隠さずに教えてくれる会社に対しては誠実さを感じました。


ちなみにですが同じ会社であっても面接官それぞれの立場によって課題の捉え方が違うこともありました。
それらをつなぎ合わせることで会社全体の課題もなんとなく見えてきたりして、とても興味深かったです。



その他、ちょっと聞きにくいようなことも割と聞いていたりしました。
参考までに、ざっくり自分の質問内容を列挙すると下記のような感じです。

  • 組織構成 (会社全体の職種分類、配属予定部署、チームの人員構成など)
  • 会社の組織を今後どのくらいの規模にまで成長させたいのか。それは何故か
  • 今後採用を強化したい職種やポジションは何か。その採用は何故必要なのか
  • 応募しているポジションの採用背景
  • 職務内容やミッション
  • 仮に自分が採用された場合に期待役割やアウトプット
  • (資金調達したスタートアップの場合)調達した資金で強化したい分野
  • IPOやバイアウトを視野に入れているのか
  • 投資家との関係性
  • 競合するサービスやプロダクト、同業他社との違い
  • (AIやディープラーニング等の新しい技術を取り入れている会社の場合)それらの技術をプロダクトのどのようなところで使っているのか
  • (法的なリスクがあるサービスやプロダクトだなと感じた場合)こういう法的なリスクがありそうだが、それについてどう思っているか。リスクを認識しているのであれば、どのような対策を行なっているのか


質問に対する回答の中身も重要なのですが、それ以上に、質問に対してどのように対応するのかという点に会社の採用に対する考え方が現れるように思いました。
質問の中には「今は(ビジネス上の理由等から)答えられません」という反応もありました。
そういった反応を含め、率直かつ真摯に情報提供をしようとしてくれる企業の方が、自分はより好感を持ちました。


色々質問をしていくと会社の今の状況や目指している方向性が見えてきます。
今まで知らなかったことや「思っていたのと(良い意味でも悪い意味でも)イメージが違う!」といったことにたくさん遭遇しました。
転職活動においては公開されている情報だけではなくて、こうやってリアルな情報を収集することも意味あることだなぁと改めて思いました。


2. 「何を考えているか」を深掘りして聞き出そうとしてくれる

表面的な受け答えだけで判断するのではなく、何を考えているかまで聞き出そうとしてくれる姿勢はとても嬉しかったです。
相手の考えを深掘りするというスキルはものすごく高度なものだと思います。
ですが深掘りする質問をしてくださった方は皆、職務経歴書の内容をきちんと読んでくださっていたり、私のブログや公開しているスライドに目を通してくださっていました。
とても難しいことではあるのですが、事前の準備で大きく変わってくるのかなとは思いました。


今回の転職活動において私は、自分自身のことを盛ったり隠したりキャラクターを作ったりしないように心がけていました。
相手に合わせるようなことをすることによって、入社後に「やっぱり違ったね」となるのは互いにとって不幸なことだと考えるからです。
割といつもテンションが低く*1、とある適性試験の結果によると出現確率2%程度のレベルで内向性が強く、合理性を好んで空気を読むのが苦手…という私は、世の中一般的に想起される「人事」とはちょっと違うように感じられることも多かったようです。

面接でよくある質問で「一番うまくいった、効果があった施策はどんなものですか?」というものがあります。
私にとってこの質問は答えるのがとても難しいものでした。
というのも、私はこれまで何か大きな施策で採用の結果を出してきたというよりは、以前のエントリーのような細かい業務改善を行ったり、面接の準備や一つ一つのコミュニケーションを工夫したり、業界の動向を情報収集するようにしたり…ということが成果につながってきたと捉えており、その一つ一つの取り組みは当たり前過ぎて「施策」と言えるのかどうか…と思っていたからです。(質問に対しては率直にこの通り答えていましたが。)


こうしたことから「もっと明るい人が良い」「人情味溢れるタイプの人が良い」「情熱が感じられない」「成功体験の再現性がなく、スキルが低い」といった理由でお見送りになることも何回かありました。
こういった会社とは「ご縁がなかったんだな」とは思いつつも、考えや思いが伝わらない状況にモヤモヤすることもありました。

正直、私の伝え方が下手くそなのだとは思います。自分の考えを表現することは苦手分野でもあります。
一方、採用人事の経験から面談や面接という場には慣れていルものの、それでも自分のことを語るというのは難しいことだなぁと思いました。
採用経験者でもこんな感じなので、それ以外の方はもっと緊張したり、うまく伝えられないもどかしさを感じたりするのではないでしょうか。



逆に、非常に印象に残っている質問もあります。
過去の取り組みや工夫したことやそれに対する自分の評価等を聞かれていたのですが、「言葉だけを聞いているとやる気がなさそうな印象を持ってしまうのですが*2、やる気がなければこれまでの実績や成果は出せないように思うのです。なんで成果が出るまで工夫をしたり続けたりできたんですか?」というものでした。
言葉の細かいところまでは覚えていないのですが、そんな感じです。
その質問を受けて「確かに。なんでだろうなぁ…。」と考えることになりましたし、自分では気づいていなかった新たな側面を引き出してもらえたように感じてとても嬉しかったです。





3. 自社の状況に応じた採用可否の判断をする

中途採用においては「タイミング」も非常に重要な要素です。
考え方、社風、フィーリングが合致しポテンシャルを感じることができたとしても、今このタイミングで入社してもらうことが自社にとっても本人にとっても良いことなのかどうかを考える必要があります。

特にスタートアップやベンチャーでは社員数も少ないことが多く育成にあまりコストをかけることができないため、入社後すぐに即戦力として成果を出すことを求められることも多いです。
フィーリングやカルチャーがマッチすることももちろん重要ですが、その部分のフォーカスしすぎて実はスキルがミスマッチだった…ということも良く聞く話です。


今回の転職活動では職種を人事に絞らず、幅広く選考を受けたり話を聞きに行ったりしていました。
とあるスタートアップから「こういった業務(人事以外の分野)を担当してもらうのは可能性としてどうか」というお話をいただいたことがありました。
実際にお会いしてお話を伺い、先方も私にとても興味を持ってくださったようでフィードバックも「是非!」といった勢いのある感じだったのですが、再検討した結果お見送りとなりました。
落ち着いてその会社のフェーズや会社の成長のために必要なこと等を考慮した結果、ポテンシャルや社風とのマッチの面は高く評価してくださったものの、スキル面で今のこのタイミングで採用すべき人材ではないという検討結果でした。


自分もその会社の話を聞いた後、私がその業務を担当することが本当に今のその会社にとって良いことなのかどうか「大丈夫?」と感じていたこともあり、非常に納得感があるお見送りの理由でした。
また同時に、勢いやフィーリングで採用をするのではなく、今の会社にとって必要なことを見極めようとしている点にとても好感を持ちました。
今回はご縁がなかった会社ですが、またどこかで何かしらの形でご一緒できる機会があるといいなぁと思っています。


4. ネガティヴな点についても考慮している

人を採用するということにあたっては「この人を採用すれば万事うまくいく!何も問題は起きない!」ということは難しいです。
また、人間は不完全なものですから「この人のこういう面、個性として尊重はするけれども実際大丈夫かな」といった心配があって当然だとも思います。
そういった懸念やリスクについて率直に伝え考慮している会社は、ただ頭数で採用しようとしているのではなく、その人のことをちゃんと理解して尊重しようとしていると感じました。


例えば、とある企業では「任せようと思っているポジションは業務範囲がカチッと定義されているものではなく、自分で仕事を見つけていってもらうことも期待しているポジションです。そんな環境で働くことはあなたのやりたいことと合致していますか?」というストレートな質問がありました。
また、既述の通り私は割と合理的なことが好きで感情的なアプローチに対応するのが苦手だったりするのですが、「社員の中にはエモーショナルなコミュニケーションを好むタイプの人もいますが、そういった人とうまくやっていけそうでしょうか?」といったことも聞かれたことがあります。

人によってはそのような、ある意味ネガティブな質問をすることを不快に感じる人もいるかもしれません。
少なくとも自分の場合は、何か不安や心配な点があるのであればそれを率直に聞いてくれる方がありがたかったですし、「ああ、互いに幸せになれるかどうかということを考えているんだなぁ」と感じました。


5. 対応が早い/対応期限を教えてくれる

いうまでもないことかもしれないです。
やはり、レスが早いと「本当に採用を大事に思っているんだな」と思います。

ただ、様々な事情で、すぐに結果を出すことができないということもあります。
そういう場合には、例えば「結果まで1週間程度かかるかと思います。お待たせして恐縮です。」といったことがあるだけで随分と印象が違うなぁと思いました。
「結果が出るのいつだろう?」というヤキモキも軽減されますし、その1週間を待ちたいかどうかは私が決めれば良いことなので。


レスが早いということは単に印象をよくするというだけでなく、その会社の意思決定スピードや、現場や担当者に権限移譲ができているかというバロメーターの側面もあると思います。
「うちの会社はスピード感があって裁量権もありますよ!」といっている会社が、選考のレスが遅く、結果を出すのに面接官以外の人と調整をしなければいけない…というのでは矛盾しているからです。

ところで、自分が面接官をひとりで担当していた時は「この人いいな」「自分ではこの点*3が判断できないから、次回あの人に会ってもらおう」といった時はその場で(自分の)選考合格の旨を伝えて、場合によってはその場で日程調整もしていました。
割と一般的な面接のやり方なのかなぁと思っていたのですが、案外他の会社ではやっていなかったりするようです。
小手先のスキルではありますが、良かったら使ってみてください。


まとめ&終わりに

自分は社会人になってから、エージェントや社内人事と形を変えつつも「採用」というものにずっと関わってきています。
先のエントリーのようなことは以前から知っていたことではあったのですが、転職活動をしたことで再認識しましたし、改めて学びにもなりました。


「当たり前だよね」というようなことばかり書きましたが、では「お前はこれまで書いた当たり前のことをいつでも100%できていたのか」と問われると、正直なところ自信はありません。
業務効率化がうまくできていなかったり何かと忙しかったりで時間と心の余裕がなく、ついつい対応が雑で遅くなってしまうといったことも実際にありました。
また、人事という職種でありながら人間の対応が苦手という私は、面接や面談が上手くできなくて悩んだり、相手の話をうまく引き出すことができず、自分にがっかりすることも多くありました。
今回の転職活動を通じて、例えばですが「ああ、レスが遅いだけでこんなにも会社に対する志望度や好感度が下がるんだなぁ」「話を聞き出してくれるとすごく嬉しいなぁ」といったことを改めて経験したことはこれまでの内省にもなったと思いますし、今後の糧にしたいとも思っています。



今回の転職活動において自分が選考を受けていたのは採用が上手くいっていない(だからこそ採用人事を採用したい)、人事という専任者を初めて採用したい(専任者がいないので採用というものがそもそもあまり良くわからない)といった企業も多く、だからこそ自分が経験したようなことが起こりやすかったのだと思います。
ですから仮に自分がそれらの会社に入社していたら、基本的なことをやり直すところから始めたのではないかと思います。



(広く)IT業界は人手不足が蔓延しており、どこの会社も採用に力を入れています。
人事や採用に関するメディアでは様々な会社の成功事例やノウハウが掲載されていますし、採用に関する勉強会も盛んに行われています。
そういった記事や勉強会では、「こうやったらうまく大量採用ができた」「採用ツールの活用法」「採用広報のためにオウンドメディア運用」「リファーラル採用を成功するためには」といった内容が多数共有されています。
そのこと自体を批判するつもりも、否定する意図もありません。
私自身、これらの情報を参考にすることもありました。


ただ一方でずっと思ってきたのは、採用には銀の弾丸はなく、今回私が書いたような基本的なことをコツコツと実施すること、そしてその基本的なことを常に実現できるように業務をきちんと見直すことも成功に繋がるの方法なのではないかということです。
実はごくごく基本的なことを当たり前にすることが採用や組織における課題を解決するための本質に繋がっていて、施策はその基本的なことの上に成り立つものではないか。
他社の事例研究や斬新な施策の企画実施も大事だけど、もっと足元を見直してみるところから始めてみても良いのではないか、とも思うのです。


本当にありきたりなことしか書いていないので、まさかこんなにも拡散されるとは思っておらず、びっくりしています。
知り合いに「なんでこんなに拡散してるの?何が良かったのかさっぱりようわからん。」っていうようなことを聞いてみたところ、「その当たり前を言語化することに価値がある」と言われ、「なるほど」と思ったりしました。

少しでも採用や転職に際して参考になる要素があれば嬉しいです!

*1:ポジティヴに表現すると「落ち着いている」とも言います

*2:ちなみにですが、ここでお互い爆笑してしまいました

*3:例えばエンジニアの技術スキル等